サウジアラビアのタエフ近郊に、まるで人間の手によって切断されたかのような驚くべき岩があります。
その名も「アル・ナスラ岩(Al Naslaa Rock)」。巨大な一枚岩が、まるでレーザーで真っ二つにスパッと切られたような姿で砂漠の中に静かに佇んでいます。
この不思議な岩は、観光客や地質学者、さらにはUFO愛好家までも魅了してやまない存在です。
アル・ナスラ岩の基本情報
- 場所:サウジアラビア、タエフ近郊のタイマー・オアシス(Tayma Oasis)
- 構造:巨大な砂岩の岩が、中央で垂直にまっすぐ割れている
- 支え:二つに割れた岩は、それぞれが細い支点にバランスよく乗っている
- 特筆点:割れ目があまりにもまっすぐで滑らか。まるで人工物のように見える
この岩は、誰が見ても「自然のものとは思えない」と感じてしまうほどに精密で、まるでハイテク装置で切断されたような見た目です。
サウジアラビア北西部の砂漠にあるアル・ナスラと呼ばれる巨石の写真 https://t.co/iSZ7cQ9tXW 中央に直線的な細い割れ目があり、両側の石が天然の台座に載っている。割れ目の成因は原岩にあった節理、断層活動、凍結融解、古代人が切ったなど多様な説があるが決定打はまだない。撮影者は Disdero 氏。 pic.twitter.com/zGSdL55QFp
— Oguchi T/小口 高 (@ogugeo) March 28, 2022
どのようにして割れたのか?科学的な仮説
この岩の割れ方はあまりにも不自然に見えるため、しばしば「古代文明の遺産ではないか?」「宇宙人が関与したのでは?」といった都市伝説が語られることがあります。
しかし、現在のところ最も有力とされるのは、以下のような自然現象に基づいた地質学的な仮説です。
岩の地質学的背景
アル・ナスラ岩は、主に砂岩(sandstone)から構成されているとされる¹。
砂岩は風化や浸食に比較的弱く、長期的な自然環境の影響を受けやすい岩種である。
現地は砂漠気候であり、気温の日較差が大きいため、熱膨張・収縮および水分の凍結膨張が風化プロセスを促進しやすい条件となっている²。
仮説①:地殻運動による断層起因の亀裂
もっとも地質学的に妥当とされているのは、**地殻の微小断層(minor faulting)**によって自然に発生した直線的な割れであるという仮説である。
地殻の応力が特定方向に作用することで、内部に力が集中し、岩体が比較的直線的に破断されることがある。
このような現象は特に、長期にわたって乾燥と応力の交差が繰り返される地域で観察されやすい。
仮説②:凍結膨張と気候要因による割れ
次に考えられるのが、微小な亀裂に水分が侵入し、夜間に凍結することで体積が膨張し、亀裂を徐々に広げていく「凍結膨張(frost wedging)」の効果である。
サウジアラビアの一部地域では冬季に気温が氷点下近くまで下がることもあり、昼夜の温度差によってこのような力が加わる可能性はある。
仮説③:選択的風化(Differential Weathering)
さらに、岩の中に含まれる鉱物の組成の違いによって、風化の進行速度が異なる部分が自然に割れ目となる「選択的風化」も重要な要因の一つであるとされている。
例えば、シルトや粘土質の層が薄く存在していた場合、そこだけ風化が進行しやすく、構造的に割れやすくなる。
結論:自然現象として説明可能な地質構造
アル・ナスラ岩の割れ目は、複数の自然的要因が重なった結果として形成された可能性が高い。
断層、凍結膨張、鉱物的異質性などが複合的に作用し、現在のような滑らかで直線的な割れとなったと解釈するのが最も合理的である。
科学はロマンを打ち消すものではなく、むしろ自然の中に潜む秩序や美を明らかにする手段であることを、本岩の観察は教えてくれる。
人工的に見える理由と都市伝説
割れ目があまりにも滑らかで直線的なため、「これは自然ではない」と信じる人も少なくありません。
中には、「古代の高度文明がレーザーのような装置を持っていたのでは?」「宇宙人が何かの実験をした痕跡では?」といった説まで飛び出しています。
また、岩の表面には**古代の岩絵(ペトログリフ)**が残されており、この地が古くから人類の活動の場であったことが分かっています。このことも、人工説を後押ししているのかもしれません。
ただし、現時点ではこの割れ目が人為的なものだという証拠は一切ありません。ほとんどの地質学者は、自然による形成であると考えています。
観光スポットとしてのアル・ナスラ岩
サウジアラビア政府は観光事業の一環として、このような自然遺産の整備を進めており、アル・ナスラ岩も観光名所として注目されています。
現地を訪れた人々はその巨大さと神秘的な美しさに圧倒され、写真や動画をSNSでシェアしています。
特に夕暮れ時、岩に夕日が差し込む瞬間は、まるで岩自体が発光しているかのような幻想的な光景になります。
自然が生み出した芸術
アル・ナスラ岩は、自然が気の遠くなるような時間をかけて作り上げた奇跡の芸術ともいえる存在です。
私たちが見て「人工物のようだ」と感じるのは、自然の力がいかに壮大で、そして時に精密であるかを物語っています。
自然と科学、そしてロマンが交差するこの岩を、いつか実際にこの目で見てみたいものです。
まとめ
- アル・ナスラ岩は、まるで人工的に切断されたかのように見える神秘の岩
- 割れ目は自然現象によってできたと考えられている
- ペトログリフの存在や人工説もあり、ミステリー要素満載
- サウジアラビアの新たな観光地として注目されている
自然の中に潜む「不自然なもの」は、時に人間の想像力を大きく刺激します。アル・ナスラ岩はその最たる例といえるでしょう。
あなたもこの奇跡の岩について、誰かに話してみてはいかがでしょうか?
ではでは(^ω^)ノシ
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