「バグ」という言葉を使うとき、ふと「虫のバグ?」と思ったことはありませんか。
実際に“蛾が機械に挟まって止まった”という有名な話もありますが、語源はそれだけでは説明しきれません。
この記事では、バグという言葉の成り立ちと、当時のコンピュータが今のコンピュータとどう違ったのかを、噛み砕いて解説します。
1. 「バグ(bug)」という言葉の基本
まず端的に言うと、「bug」は英語で「虫」を意味しますが、それ以外にも古くから「厄介者」「お化け」「怪異」といった比喩的な意味で使われてきました。
機械や装置に問題が起きたときに「厄介なもの=bug」が原因だ、という比喩が転じて「欠陥・不具合」を指すようになったのが基本的な流れです。
2. 「蛾(moth)のエピソード」はどう関係する?
コンピュータ史でよく語られる有名なエピソードがあります。1947年、Harvard Mark II という大型機の中に蛾(moth)が入り込み、リレーに挟まって動作不良を起こした。
コンピュータが出力するテープに蛾が挟まって動作不良を起こすという
関係者がその蛾を取り出して「first actual case of bug being found(実際に見つかったバグの最初の例)」と記録した、というものです。
この話は非常に象徴的で、人々に「バグ=虫が原因」というイメージを強く残しました。
ただし重要なのは――この蛾の事件が「バグという言葉そのものの起源」ではない、という点です。
Edison や19世紀の工学文献でも既に「bug=装置の欠点・トラブル」という表現が使われており、
「虫の挿入」エピソードは後から語られた具体例が象徴化したもの、という理解が現在では一般的です。
3. もっと古い語源(歴史的背景)
古い英語・中英語には「bugge(怪物や恐ろしいもの)」のような語があり、これが現在の bug の比喩的用法に繋がったという説があります。
また、発明家トーマス・エジソンが装置の不具合を「bug」と呼んだ記録も残っています。
つまり「バグ=虫」という直訳だけで語源を断定するのは早計で、言語的な比喩と具体的な物理的事象(蛾の挿入)が重なって現在の意味に落ち着いた――と考えるのが自然です。
4. 当時のコンピュータ(Harvard Mark II など)は今と何が違ったのか?
「蛾が入った」話が説得力を持つのも、当時のコンピュータが今より物理的で機械的だったからです。主な違いを挙げると:
- サイズと構造:当時の計算機は部屋1つ分の大きさ、真空管やリレー、機械的な部品が混在。今のPCやスマホのような小型半導体ベースではありません。
- 動作方式:多くがエレクトロメカニカル(電気+機械)で、リレーや真空管の接点に物理的な異常が起こりやすかった。
- 故障原因:虫や埃、接触不良、空調や電源の影響など“物理”の影響が大きかった。現代は部品の小型化・密封化で物理的な異物混入は減りましたが、ソフトウェアの複雑化に伴い「設計上のミス」や「プログラムのバグ」が主因になっています。
- 速度と用途:当時は特定の科学計算や軍事用途が中心で、処理速度も遅かった(加算・乗算に数十分の一秒~数秒かかるものも)。今はGHz帯のプロセッサで多用途かつ高速です。
この違いを頭に入れると、蛾の逸話がなぜ当時話題になったのか、そしてなぜそれが語り草になったのかがよくわかります。
5. 「デバッグ(debugging)」という言葉
バグを取り除く作業を「デバッグ(debugging)」と言いますが、これも「虫(bug)を取り除く/駆除する」という比喩から来ています。
実際のところ、最初期のデバッグ作業は物理的な調査(接点のクリーニング、部品交換、配線修正)と設定確認が中心でした。
現代のデバッグは主にソフトウェアの解析・テスト・修正が主体です。
まとめ(結論)
- 「バグ」は確かに「虫」という意味を持つ言葉ですが、語源はそれだけではなく、古い言語での「厄介者」的な比喩の歴史がありました。
- 1947年のHarvard Mark IIの蛾の話は実話で、コンピュータ史の象徴的エピソードですが、それが単独で語源の全てを説明するわけではありません。
- 当時のコンピュータは物理的・機械的な問題を起こしやすく、だからこそ「実際に虫が故障原因になった」出来事が起きやすかった――現在のソフトウェアバグの原風景がそこにある、という見方が妥当です。
ではでは(^ω^)ノシ
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