数珠丸恒次(じゅずまる つねつぐ)は、「天下五剣(てんかごけん)」のひとつに数えられる、非常に神聖で霊性の高い日本刀です。
特に仏教との強い結びつきがある名刀として知られています。
数珠丸恒次とは?
- 種別:太刀
- 製作年代:平安時代末期〜鎌倉時代初期
- 刀工:青江恒次(あおえ つねつぐ)
- 所蔵:兵庫県・本興寺蔵(重要文化財)
刀工:恒次(つねつぐ)について
- **備中青江派(びっちゅう あおえは)**を代表する刀工の一人。
- 恒次は青江派の中でもとりわけ評価の高い名工で、精緻な地鉄と美しい刃文で知られます。
- 「青江物(あおえもの)」と呼ばれる一群の刀剣の中で、最上位に位置づけられるのがこの数珠丸です。
❓ 異説:備前恒次作(古備前派)
この説では、刀工は青江恒次ではなく、古備前派の恒次であるとされます。
主張者:佐藤貫一(佐藤寒山)
根拠:
数珠丸の作風が、青江派の典型からやや外れていること。
特に備前もの特有の地鉄や刃文の傾向がみられること。
仮説:
古備前派の名工「正恒」の子とされる「恒次」が作者である可能性。
この恒次は、備前国で活躍した別系統の刀工で、青江派とは別筋。
名称の由来「数珠丸」とは?
- 名前の由来は、日蓮宗の祖 日蓮聖人に関連した伝承にあります。
- 日蓮が信徒の寄進でこの刀を所持した際、その柄に数珠を巻いていたと伝えられたことから「数珠丸」と呼ばれるようになったと言われています。
- 殺生を戒める仏教においても、この刀は護身具としての性格を持つ特別な刀剣とされてきました。
日蓮聖人が持っていたというのが面白いですね
仏教と武器ってピンとこないかもしれませんが日本の歴史上、武士と僧兵が二大勢力なんですよね
戦国時代まではバリバリの武闘派って感じの勢力です(個人の感想)
刀身の特徴
基本諸元
項目 | 内容 |
---|---|
刃長 | 83.7 cm(約2尺7寸6分) |
反り | 3.0 cm(やや深めの反り) |
銘 | 「恒次」一字銘(佩表) |
茎(なかご) | 生ぶ茎(うぶなかご)=磨上げなし(オリジナル) |
目釘孔 | 1つ(健全) |
※「佩表(はいおもて)」とは、刀を腰に佩くとき、表にあたる面。太刀の場合は右側が佩表になります。
刀身の鍛え・刃文・地鉄
- 鍛え(地肌):小板目(こいため)肌
→ 細かく緻密な木目状の模様で、上品さと技術の高さを示します。 - 映り(うつり):乱れ映りが立つ
→ 地鉄に現れる白い模様のようなもので、刃文とは別の美的要素。乱れ映りは華やかで見る者を惹きつけます。 - 地沸(じにえ)つく:
→ 鋼の地肌にきらめく粒子状の輝き(沸)が現れる状態。鍛錬が行き届いている証拠です。
佐藤貫一(佐藤寒山)の評価
著名な日本刀研究家 **佐藤貫一(号:佐藤寒山)**は、数珠丸恒次について以下のように評価しています:
「生ぶ茎在銘の堂々たる太刀姿で、しかも頗る健全で出来がよく、日蓮の佩刀であることに恥じない名刀」
✨ 評価ポイント
- 生ぶ茎(磨上げなし)・在銘:
→ 非常に貴重。多くの古刀は後世で切り詰め(磨上げ)られてしまうが、本刀はオリジナルの姿を保っている。 - 「堂々たる太刀姿」:
→ 反りがあり、長さも充分。平安末期〜鎌倉初期らしい、威厳あるフォルム。 - 「頗る健全」:
→ 刀身の保存状態が極めて良好であり、使用歴が少なく、霊剣としての役割にふさわしい保存状況。 - 宗教的背景:
→ この刀が日蓮聖人の佩刀であったという由緒を持ち、武器以上の精神的・宗教的価値が付加されています。
- 派手さはなくとも、格式・品格・霊性を兼ね備えた静かな美しさが特徴です。
伝来・所蔵の歴史
- 一説では、日蓮に帰依した信者が数珠丸を献上したと伝わります。
- 以降、**日蓮宗の本山・本興寺(兵庫県尼崎市)**に保管され、現在も同寺に伝わる秘宝として扱われています。
- 近年までほとんど公開されることがなかったため「幻の名刀」とも呼ばれていました。
- 現在は重要文化財に指定され、特別展などで展示される機会があります。
♂️ 逸話・霊剣としての性格
- 刀剣でありながら、仏教的加護や法力の象徴として語られる稀有な存在です。
- 実戦で使われた記録はなく、護身用・祈祷用・祭礼用としての性格が強い。
- 日蓮宗の刀として信仰の対象とされ、**霊力を宿す「宝剣」**とみなされていました。
現代文化での登場
◯ 刀剣乱舞
- 数珠丸恒次は「刀剣男士」として登場。
- 静かで落ち着いた、仏僧のようなキャラクターとして描かれ、人気を博しています。
- 2016年のゲーム実装時には「ついに来た」と話題になりました。
参考資料・関連文献
- 『名刀図鑑』佐藤寒山
- 『日本刀名刀事典』
- 本興寺の公開資料・展覧会図録(特別展示「天下五剣」など)
- 文化庁「国指定文化財等データベース」
天下五剣の中での立ち位置
- 天下五剣の中でも、もっとも宗教的・精神的な象徴性が強い刀。
- 他の五剣(童子切・鬼丸・三日月・大典太)と異なり、仏教との結びつきが最大の特色。
- 派手さではなく「霊性・威厳・静謐さ」を持つ刀として、独特の地位を占めています。
✨ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 数珠丸恒次(じゅずまる つねつぐ) |
刀工 | 青江恒次(平安末期〜鎌倉初期) |
特徴 | 仏教と深く関わる霊剣、護身具としての刀 |
所蔵 | 本興寺(兵庫県尼崎市) |
指定 | 重要文化財 |
地位 | 天下五剣の中で最も霊性が強い |
歴史的な価値や美術的な価値についてはこんな感じ
観点 | 内容 |
---|---|
歴史的価値 | 日蓮聖人にまつわる伝承を持つ、宗教的背景のある刀 |
美術的価値 | 鍛え・地鉄・姿ともに優れており、かつ保存状態が非常に良好 |
鑑定上の評価 | 生ぶ茎・在銘・健全な刀身は極めて貴重。名刀中の名刀 |
精神的象徴性 | 武士の刀というより、護身・祈祷・信仰の象徴としての存在感が際立っている |
天下五剣の中で | もっとも「霊剣」的性格を強く帯びる特異な存在 |
ではでは(^ω^)ノシ
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