水は私たちの身近な存在ですが、極限状態になるとまったく異なる「氷」に変化することがあります。
その中でも近年注目されているのが、**超イオン氷(Superionic Ice)**という不思議な物質です。
本記事では以下の内容をわかりやすく解説します:
- 超イオン氷とは何か?
- 通常の氷や「氷X」との違い
- 超イオン氷で核融合は起きるのか?
超イオン氷とは?
超イオン氷とは、高圧・高温状態で形成される水の特異な相(状態)で、固体と液体の性質を併せ持つ氷です。
特徴まとめ:
特徴 | 内容 |
---|---|
状態 | 固体の酸素格子の中を水素イオンが動き回る |
構造 | 酸素は固定、水素は流動的に動く |
電気伝導性 | 高い(導電性を持つ) |
見た目 | シミュレーションでは黒っぽい |
圧力 | 約100 GPa(100万気圧)以上 |
温度 | 2000~5000K(約1700~4700℃) |
存在場所 | 天王星・海王星などの巨大氷惑星の内部で予想される |
このように、固体のようでいて中では水素が動き回るという、まさに“半分固体・半分液体”のような物質です。
「氷X」との違いは?
同じく高圧でできる氷の一種に「氷X」があります。両者の違いを比較しましょう。
項目 | 氷X | 超イオン氷 |
---|---|---|
状態 | 完全な固体 | 固体+液体(ハイブリッド) |
圧力 | 約7~12 GPa | 約100 GPa以上 |
温度 | 室温でも安定 | 2000K以上の高温 |
構造 | 水素が酸素間に固定される対称型構造 | 酸素格子の中で水素イオンが動く |
電気伝導性 | 絶縁体 | 導電性あり |
氷Xは「静的」な固体ですが、超イオン氷は動的で導電性があり、まるで“動く氷”です。
氷Xよりも超イオン氷を作る方が難しそうです。
「水だから核融合しそう?」→ 実はしません
超イオン氷には水素が含まれており、しかも水素イオンが自由に動いています。
すると、「核融合が起きるのでは?」と思うかもしれません。
しかし結論はNO!
核融合に必要な条件:
- 温度:数百万度以上(太陽の中心で約1500万度)
- 圧力:超高密度で核同士が接近できる環境
- 燃料:重水素(²H)や三重水素(³H)など、融合しやすい同位体
超イオン氷の条件:
- 温度:数千度 → 核融合には足りない
- 圧力:高いが密度が不十分
- 水素は通常の¹H(水素原子) → 融合には非効率
つまり、水素があるとはいえ、超イオン氷では核融合は起こりません。
なぜ注目されているの?
超イオン氷は巨大氷惑星の内部で存在している可能性があり、以下のような宇宙科学的な重要性を持ちます:
- 天王星・海王星の磁場の異常な構造を説明できる
- 地球外の高圧物質科学の鍵
- 新しい導電性物質の研究対象
✅ まとめ
超イオン氷とは、固体の酸素格子の中を水素イオンが液体のように動き回る導電性の氷です。
普通の氷や氷Xとはまったく異なる、宇宙や極限環境でしか存在できない不思議な物質です。
- 氷X → 固体で水素も固定
- 超イオン氷 → 水素が動いて電気を通す
- でも核融合するには温度・圧力が全然足りない
宇宙と物質の極限をのぞく超イオン氷の世界、ぜひ覚えておいてください!
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