「天下五剣(てんかごけん)」は、日本刀の中でも特に名刀として名高い5振(ごふり)の刀剣を指します。
いずれも日本の刀剣史上、芸術性・伝説・技術の面で非常に高く評価されています。この五剣は、歴史的背景や所有者、作刀者なども含めて、多くの逸話が残されています。
以下がその「天下五剣」と呼ばれる5振です:
1. 童子切安綱(どうじぎりやすつな)
- 刀工:安綱(平安時代の刀工、山城国・伯耆国出身)
- 特徴:大太刀。源頼光が酒呑童子を討ったとされる伝説が由来。
- 現存地:東京国立博物館(国宝)
- 備考:五剣の中でも最も格式が高いとされ、「天下第一の名刀」とされることもあります。
ちなみに童子というのは鬼の別名みたいなもの、酒呑童子とか茨木童子みたいな感じ
童子切の名前通り鬼を切った逸話がある。
2. 鬼丸国綱(おにまるくにつな)
- 刀工:国綱(粟田口国綱、鎌倉時代)
- 特徴:霊力を持つ刀とされ、悪霊退治の逸話あり。
- 現存地:皇室御物(宮内庁管理、非公開)
- 備考:「鎌倉将軍家」「北条家」「足利家」など、代々の権力者に重用された。
3. 三日月宗近(みかづきむねちか)
- 刀工:三条宗近(平安時代の刀工)
- 特徴:刃文に三日月のような模様が現れる美しい刀。
- 現存地:東京国立博物館(重要文化財)
- 備考:特に美術的価値が高く、「美しさ」で五剣の中でもトップクラスとされる。
4. 大典太光世(おおでんたみつよ)
- 刀工:三池光世(平安末期〜鎌倉時代)
- 特徴:豪壮な作り。加賀前田家に伝来。
- 現存地:前田育徳会(国宝)
- 備考:「大典太」という名は豊臣秀吉に由来し、家康から前田家に下賜された。
5. 数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)
- 刀工:恒次(備前長船派)
- 特徴:日蓮聖人が法具として持っていたとされる。
- 現存地:兵庫・本興寺(重要文化財)
- 備考:宗教的意味合いが強く、「僧侶の刀」として有名。
補足:なぜ「天下五剣」なのか?
この5振は、歴史的・宗教的・美術的・技術的価値がいずれも極めて高いため、
「天下に並ぶものがない五振の名刀」として江戸時代から称されるようになったといわれています。
誰が天下五剣を決めたの?
実は誰が言い始めたのか明確には分かっていない
ただ過去の書物から天下五剣と言われる刀が存在していた事がわかる。
「天下五剣」という名前そのものがいつから使われたかは、2013年時点でははっきりしていない(ウィキペディア出典)。
ただし、**江戸時代に成立した刀剣書『享保名物帳』の写本『諸家名剣集』**には、すでに5振を「天下出群之名剣五振之内也」などと記しており、この時点で「特別な5振」として認識されていた。
✅ 天下五剣が「5振」である理由
1.【5】は「縁起の良い数字」だった
古代より日本文化や東アジア思想では「5」という数字が特別視されてきました。
- 五行思想(木・火・土・金・水)
- 五常(仁・義・礼・智・信)
- 五大(地・水・火・風・空)※仏教
- 五味(甘・辛・酸・苦・鹹)
- 五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)
など、「5」は宇宙や人間の構成要素、調和を表す数字として扱われてきました。
2. 格式を表す「五山制」にならった影響も
たとえば禅宗においては、
- 鎌倉五山
- 京都五山
など、格式の高い寺院や制度に「五」をあてがって格付けをしてきました。
→ このような影響もあり、「五剣」とすることで、最上格・最高位の刀という印象を与えることができたと考えられます。
3. 文化的美意識としての「五」
他にも日本文化では「三」「五」「七」などの奇数(陽数)を好みますが、「五」は安定感とバランスの象徴。
- 「三」では少ない
- 「七」ではやや多く収まりが悪い
- 「五」は程よい数
→ 名刀の頂点として選ぶのに、「五」は最適な数だったという美的・象徴的な側面があります。
まとめ
理由 | 内容 |
---|---|
縁起の良さ | 日本や東アジアで「5」は調和・吉祥の象徴 |
禅宗などの影響 | 「鎌倉五山」「京都五山」など、格式を示す制度にも用いられた |
格付けとしてのちょうど良さ | 「3では足りず、7では多すぎる」。5は最上位グループに適した数 |
親しみやすさと覚えやすさ | 長く語り継がれるための語呂の良さ、定着のしやすさ |
補足:では「六剣」や「七剣」はなかったの?
実際に一部では、「名刀六振」や「日本刀十傑」といった別の分類もありますが、それらはあくまで後世の便宜的分類であり、「天下五剣」ほどの伝統的権威や格式は持っていません。
現代にまで「天下五剣」という言葉が残っているのは、「五」という数字が文化的にも感覚的にも“ちょうどいい”とされてきたからなのでしょう。
ではでは(^ω^)ノシ
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