道具の雑学

竿頭には色んな顔がある──旗竿先端の飾りと、日本国旗の“金の玉”の意味とは?

旗を立てるとき、意外と目がいくのが竿の一番上に付いているアレです。

国や場所によって形や素材が違っていて、見慣れた日の丸の旗竿の先端が“まんまるの金の玉”なのは日本くらいだと思っていませんか?

 

今回はまず世界の竿頭(フィニアル)にどんな種類があるかに触れ、そのうえで“なぜ日本は金の玉なのか”、

そして「いつ頃から取り付けられるようになったのか」を、実務的な慣習や伝承を踏まえて分かりやすく解説します。

 

 

まずは世界の竿頭いろいろ

屋外の旗竿先端に付く飾りは、国や用途、宗教・文化的背景、あるいは製品仕様によって多彩です。

北米では鷲(アメリカの象徴)をかたどったフィニアルが目立ちますし、欧州では槍先(spear/矢じり型)や国章モチーフが使われることが多い。

カナダの室内用ではメープルリーフを模した先端があるし、イスラム圏やトルコの伝統では装飾的な金属細工(アーラム/alem)が使われることもあります。

 

 

要するに、竿頭はその国のシンボルや用途に合わせてデザインされるのが普通で、「必ずこうでなければならない」という世界共通のルールはほとんどありません。

だからこそ、日本の“丸くて金色”という様式が目を引きます。次はその理由を見ていきましょう。

 

 

なぜ日本では金の玉なのか? ―― 代表的な理由を並べる

まず重要なのは、「これが唯一の正解」という説明が存在しないことです。

旗具メーカーや神社、掲揚マナーを解説する現代の資料には複数の説明があり、歴史的伝承と実務的な理由が混じり合っています。

ここではよく挙がる理由を、読みやすく整理してお伝えします。

 

 

1) 太陽や日の丸との結びつき(象徴的解釈)

日の丸が“太陽”を象った円であることを考えると、竿先に丸い金色の飾りを付けることは視覚的に整合性があります。

丸+金色は「太陽」「光」「尊いもの」と結びつけられやすく、儀礼的な場面で「格式」を演出する装飾として理にかなっていると考えられます。

 

 

2) 古い伝説・神話との結びつき(伝承的解釈)

神武天皇の伝承や八咫烏(やたがらす)にまつわる話、あるいは鳥が弓に止まって輝いたという類の神話的エピソードが、金色の球の由来として紹介されることがあります。

これらは学術的に決定づけられた史実ではなく「伝承」に過ぎませんが、文化の中で自然とそうした解釈が広まったのは確かです。

 

神武天皇の弓に八咫烏が止まり光り輝いた事で敵は目がくらみ動けなくなったというエピソードを基に金の玉になったというわけです。

 

3) 実務的・視認性の理由

丸くて金色の球は遠くからでも目立ち、旗竿の先端を視認しやすくします。

式典や公的場所では視認性と「整った見た目」が求められるため、シンプルで安定した球形の金飾りが選ばれてきたという合理的な側面もあります。

 

八咫烏でも良かったのでは?と思うかもしれませんが金色の八咫烏なんてつけたら日本国旗のシンプルさと合わせると国旗よりもカラスが目についてしまう

という事を考えるとシンプルな見た目にするしかないというわけです。

 

4) 危険回避・普及性(形状の安全性)

矢じりや槍先のような鋭い形状は見た目の面で格好いい反面、屋外での取り扱いや安全性に課題が出る場合もあります。

球形は安全で扱いやすく、住宅や学校でも採用しやすい――という実務上の利点も無視できません。

 

 

いつ頃から取り付けられるようになったのか?(時代区分と根拠の整理)

ここも一言で断定できる資料は少ないのですが、近代以降(特に明治時代以降)に現在のような国旗掲揚の作法が整備され、その過程で竿頭に金色の球を付ける形式が定着していった、というのが実務的に妥当なまとめです。

 

江戸〜明治の移行期、外国船や外交関係の増加に伴って「旗をどう扱うか」「どのように掲げるか」というルールが必要になりました。

明治政府は外国に向けた体裁や公的な象徴として国旗を定め、徐々に掲揚の作法や器具も整ってきます。

その流れの中で、屋内外で統一感を出すための簡潔なフィニアル(丸い金球など)が広まり、現代に続く慣習になったと考えられます。

 

 

ただし重要なのは、法律に「必ず金球を付けよ」と書かれているわけではないという点です。

国旗国歌に関する法律や告示は掲揚の基本を定めますが、竿頭の具体的形状や色について明確に規定する条文は一般には見当たりません。

つまり、明治期以降の慣行・製品の普及・式典文化の中で自然に定着した「慣習」だと理解するのが現実的です。

 

 

弔事(喪)や特別な扱いについて

通常掲揚時は金の玉そのままですが、弔旗(半旗ができない場面など)では竿頭の金の玉に黒い布袋を被せ、黒いリボンを垂らす形で弔意を示す運用が行われます。

これは実務上の明確な慣例として各地の神社や旗具店の案内に出てくるもので、実際の現場で広く採用されています。

 

 

まとめ

竿頭の飾りは世界を見れば実に多様で、国や文化、用途によって形や意味が変わります。

日本の“丸い金の玉”については、太陽(=日の丸)との象徴的な結びつき、伝承的エピソード、視認性や安全性といった実務的理由が重なって定着したと考えるのが自然です。

神武天皇の弓に止まった八咫烏が輝いているのをモチーフにしているというのは面白いですね。

 

明治期以降に国旗掲揚の形式が整備される過程で普及した慣習であり、法律上の厳密な規定というよりは「長い運用の中で定着した形式」です。

 

ではでは(^ω^)ノシ

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