「ヴァイキング」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
おそらく多くの人が、角(ツノ)のついた兜をかぶって、怒りに満ちた顔で剣を振り回す戦士を思い描くのではないでしょうか。
実はこのイメージ、ほとんどフィクションなんです。
今回はそんな「ヴァイキングの兜」について、歴史的な真実と、なぜツノがついたイメージが定着したのか、そして実際にツノ付き兜をかぶっていた文化はあったのか?という謎に迫っていきます。
結論から言えばヴァイキングの兜にツノはありませんでした。
実はツノなんてなかった!?ヴァイキングの本当の兜
考古学的な発見や歴史研究によると、本物のヴァイキング兜に角がついていたという証拠は一切見つかっていません。
むしろ見つかっている兜は、非常にシンプルで実用的なものでした。
例えば、唯一完全な形で発見されたヴァイキング時代の兜「イェルムンドブ兜(Gjermundbu Helmet)」は、丸みを帯びた鉄製のデザインで、鼻を守る「ナサル」と呼ばれる突起がある程度。角なんてまったくついていません。
当時、鉄は非常に貴重な資源だったため、兜そのものを持っていたヴァイキング戦士はごく一部の裕福な階層だけ。多くの戦士は、革製の帽子や鎖帷子(くさりかたびら)を代用していたと考えられています。
じゃあ、なぜ「ツノ付き兜=ヴァイキング」になったの?
これは、19世紀のロマン主義的芸術やオペラの影響が大きいです。
特に有名なのが、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』。この舞台で使われた衣装の中に、ツノ付き兜をかぶった戦士が登場したことがきっかけで、「勇ましい北欧の戦士=角のある兜」というイメージが世間に定着してしまったんですね。
さらに、20世紀の映画・アニメ・ゲームなどでこのイメージが繰り返し使われることで、完全にお馴染みのビジュアルになってしまったというわけです。
実はツノ付き兜は存在していた!?でも時代が全然違う
ここで面白いのは、「ツノ付き兜そのものは存在していた」という事実。
ただし、それはヴァイキングの時代(西暦793〜1066年ごろ)よりも、はるか昔の時代に使われていたものです。
青銅器時代(紀元前1500〜500年ごろ)
この時代のヨーロッパでは、儀式用と思われるツノ付き兜がいくつか見つかっています。
その代表例が、デンマークのヴァイクで発見された「金属製のツノ付き兜」です。これは紀元前900年ごろのもので、戦闘用ではなく宗教儀式や象徴的な場面で使用されていたと考えられています。
また、古代ケルト文化でも、動物の角や羽根を模した装飾的な兜が使われていた形跡があります。これらは戦いには向かず、カリスマ性や神聖性を演出するためのアイテムだったのでしょう。
ツノ付き兜が戦闘に不向きな理由
そもそも、ツノ付きの兜って実戦では不便なんです。
敵に引っ掛けられやすい
木の枝や建物にぶつかる
重心がずれて戦いにくい
製造コストが高い
これらの理由から、実用的な戦士がツノ付き兜をかぶることはほぼ考えられません。
それなのにイメージだけが一人歩きしてしまった、というわけですね。
まとめ:兜にツノがあるのは“ロマン”であって“歴史”じゃない!
現代のポップカルチャーで定番になっている「ツノ付きヴァイキング兜」は、言ってみればロマンの産物。
実際のヴァイキング戦士は、もっと実用的で合理的な装備をしていたのです。
ただし、ツノ付き兜そのものは古代に存在し、主に宗教や儀式に使われていたというのもまた、歴史の面白さのひとつ。
だから、これからヴァイキングをテーマにした作品を見るときは、「これはファンタジーとして楽しむものなんだな〜」とちょっとだけ意識してみると、また違った視点で面白く感じられるかもしれません。
ではでは(^ω^)ノシ
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