庭(ガーデン)の歴史を一言で言うと、「人が自然を区切り、使い、意味を与えた場所」の変遷です。
最初は生活を守るため・食べ物を確保するための実用的なスペースだったものが、やがて宗教的・象徴的な意味を帯び、さらに美を競う舞台になっていきます。
なぜ庭が生まれたのかをもう少し砕いて見ると、
- 定住と農耕の始まりで「囲う」必要が出た(動物や侵入者対策、作物の管理)。
- 実用(食用・薬草・果樹)から、余暇や社交、宗教的儀礼を行う場へ拡大。
- 権力や宗教が「理想の世界(楽園)」を地上に再現しようとして、池・島・石・水路などを意匠化した。
こうした流れは、メソポタミアやエジプト、インダス、中国、ペルシャ、ギリシャ・ローマといった各文明でそれぞれ独自に発達しました。
後述する「世界の庭園の起源」では代表例を拾いますが、共通しているのは「囲い」「水」「植栽(+石)」という三要素です。
庭を作る目的、起源は古代にまで遡り、神聖な空間を創出する目的
屋外空間を囲うというのは紀元前1万年前ごろから行われていた。
家を作りその家を守るために囲い、塀をつけた
そうして屋外だけど家の一部になったスペースをいかに活用するかというのが庭の原典だろう(個人の感想)
日本庭園はいつ頃作られた?──起点から枯山水までの流れ
日本庭園の形成は古代(飛鳥〜奈良〜平安)に始まり、そこから時代ごとにスタイルが変化していきます。
- 古墳〜飛鳥〜奈良(紀元前〜8世紀)
古墳や古代の遺構に、池や人工の小島・石組が見られることから、庭的な空間はかなり古くから存在していました。大陸(中国・朝鮮)からの影響を受けた造園要素も早くから取り入れられています。 - 平安(9〜12世紀):「寝殿造」と浄土思想の影響
貴族の寝殿造建築に伴って「池・遣水(やりみず)・築山・小島」を組み合わせた庭が整えられ、浄土思想(理想の浄土を現世に表す)とも結びつきました。『日本書紀』などに残る記述でも、中国風の池や橋を作った記録があります(※参照:フジクリーンの記事など)。 - 鎌倉〜南北朝〜室町(12〜16世紀):石の造形と禅の影響、枯山水の台頭
禅宗の影響で「水を使わずに水を表現する」枯山水が生まれます。規模は小さくなる一方、内から鑑賞する「見立て(眺める庭)」の思想が深まり、石組や苔の扱いが洗練されました。 - 桃山〜江戸(16〜19世紀):回遊式庭園の成熟と近代の拡張
大名庭園や寺社の庭で、回遊して景観を次々と見せる設計(回遊式庭園)が発展。江戸期には都市における庭の需要も高まり、様々な様式が確立しました。
まとめると、日本庭園は古代から存在し、平安で形式化、室町で枯山水が成立、桃山〜江戸で回遊式が成熟した──という流れがわかりやすいです(参考:フジクリーンの記事、庭園史まとめなど)。
世界の庭園の起源(地域別の代表例)
ここでは主要文明ごとに、庭の起源的な特徴をざっと並べます。
- メソポタミア(古代バビロニア等)
灌漑と水利技術に支えられ、王侯のための園(果樹園・邸内庭園)が早期に発展。いわゆる「空中庭園(ハンギング・ガーデン)」伝説はここに起源を求められます(伝説的ではあるが、園芸と土木の結びつきは確か)。 - 古代エジプト
ナイルの恵みを活かした池や樹木、直線的に整えられた園庭が見られ、宗教儀式や象徴性を帯びていました。 - ペルシャ(イラン)— チャハールバーグ(四分割式)
四分割された「楽園(paradise)」を模す設計が特徴。水路が中心的役割を果たし、「天国の庭」を地上に再現する志向が強いです。 - インド・仏教影響圏
宮廷庭園や宗教施設の庭に、象徴や神話的モチーフが取り入れられます。 - 中国
詩や絵画的な景観を再現する園(山水を小さく再現)や、宋以降の私家園林など、絵画的鑑賞を重視した庭が発展しました。詩・書画と庭が深く結びつきます。 - イスラム世界(中東)
ペルシャ由来の四分割式がより洗練され、宮廷・モスク付属の庭で水と対称性が重視されました。気候的に日陰と水が特に重要だったことも影響。 - ギリシャ・ローマ
住宅の中庭(ペリスティル)や噴水、装飾的植栽などを備え、社交と美の場としての庭が発展。ローマは水利・石造り技術を庭に活用しました。 - ヨーロッパ近世以降
ルネサンス期は幾何学・対称性を重視した庭、バロック期は王権を示す壮大な軸線と広がり、18世紀の英国式庭園は自然風景を模した“自然主義”へと変化します。
どの地域でも「水(あるいはそれを想起させる要素)」「囲い」「植栽・石」などが重要で、宗教観や気候、技術が様式を左右しました。
起源を知って役立つ、現代の庭づくりヒント(実践的)
歴史を知ると小さな庭作りにもアイデアが出ます。うちで試せることをいくつか挙げます。
- ミニ“チャハールバーグ”:プランターを4分割してハーブや低木を配置。中央に小さな水鉢を置けば“四分割式”の雰囲気が出ます。
- “枯山水”のエッセンス:水が置けないベランダでも、砂利と数個の石で「流れ」を表現できます。管理もラク。
- 視線をコントロールする(平安の寝殿造の発想):座る位置から見える“額縁”を意識して、バックに高木、手前に低木を置くと絵になる。
- 実用+観賞の二刀流:ハーブやミニ果樹を取り入れれば「使える庭」に。収穫の楽しみは長続きします。
- 素材を限定する:歴史を通して庭は「石・水・植物」の組み合わせで語られます。まずはこの3つから揃えるとまとまりやすいです。
まとめ
- 庭の起源は、人が自然を「囲って使う」必要から生まれ、やがて「象徴・宗教・権力の表現」という文化的側面を強めていった。
- 日本庭園は古代からの発展を経て、平安で池泉式が整い、室町で枯山水が成立、桃山〜江戸で回遊式などが成熟した。
- 世界各地でも、気候・宗教・技術に応じて独自の庭が発達したが、共通要素は「囲い」「水(または水を想起させる表現)」「植栽・石」である。
- 現代の小さな庭やベランダでも、歴史的な考え方(鑑賞の視点、象徴性、実用性)を取り入れれば、深みのある空間づくりが可能です。
庭というのは紀元前1万年前頃から家の周りを囲う事で生まれている
その屋外空間を芸術的に整えたものが世界各国で生まれたというわけですね
庭は人が自然を“コントロール”したいという欲求の表れであり、それが形を変えて「安心」「象徴」「鑑賞」という機能を帯びてきた、ということです。
古代:生存・防御のための区画
中世〜近世:象徴・宗教・権力の表現
近代〜現代:鑑賞・癒やし・実用(都市環境への適応)
という流れがある、という理解が妥当です。
メソポタミアの時代から存在しているというのはかなり面白い
ではでは(^ω^)ノシ
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参考(ご提示いただいた情報)
- フジクリーン「日本の庭|水の話」掲載記事。
- Wikipedia「庭園史」および庭園に関するまとめ記事。

