道具の雑学

ベルトの歴史 — ただの道具が“男の装い”になるまで

 

毎朝なんとなく締めてるベルト。

これ、ただズボンを落ちないようにするだけの物だと思ってない?

 

 

実は武具、身分の象徴、暗殺対策(?)、そしてファッションと、役割が時代とともにころころ変わってきた“けっこう渋い道具”なんです。

ここでは「起源→軍用→ファッション化→今の選び方」まで、ざっくりかつ読みやすく整理してみます。


1) ベルトの原点 — 実用品としての出発点

ベルトの起源は古く、腰で何かを留める“帯革”や布ひもが原型です。

古代から武器や小物を腰にぶら下げるための帯があり、それがだんだん太く頑丈になっていったのが、今日のベルトにつながります。

ファッション視点のまとめでは、青銅器時代の発見例から近代のジーンズ文化まで、機能と見た目が交差して発展してきたことが示されています。

 

 

ベルトの最古の記録は、いわゆる青銅器時代(Bronze Age)まで遡ります。例えば、武器・工具を腰帯で固定する用途から出発しています。

古代ギリシアでは、zosterという革や布の帯が兵士の腰に巻かれ、武具を支えたりしました。

古代ローマでも、軍装で革帯が使われ、武器(短剣など)を保持する「軍帯( cingulum )」としての役割を持っていました。

つまり、当初ベルトは「衣類を支える」「武具を保持する」「動きやすくする」など“実用性”が前提のアイテムでした。

初期のベルトは主に道具や武器を携行する実用的な手段であった。

腰に装着し武器を固定する軍用帯が史上初のベルトとされる。

革ベルトは柔軟性と耐久性に優れ、動作の自由度と一定の保護機能を提供したため、ギリシャ・ローマ軍でも広く採用された。

世界中でベルトのような剣を固定したりするものは発明されていたが現代のベルトにつながったのは古代ローマのベルトである。

古代ローマの軍用ベルト(バルテウス balteus またはキンクルム cingulum)に関して、時代が下るにつれて太くなる傾向があったという見解で、特に帝政後期において顕著に見られる変化です。

この変化は、特に軍事装備の進化と密接に関係しています。


️ 軍用ベルトの太さの変化

 

古代ローマの軍用ベルトは、主に以下の時期でその形状と太さが変化しました。

1. 帝政初期(紀元1世紀~2世紀)

 

  • 特徴: 比較的細い革製で、小さな装飾用金属板(プラーク)が多数取り付けられており、革を補強していました。

  • 名称: キンクルム・ミリターレ (Cingulum Militare)

  • 機能: 剣や短剣(プーギオー)を吊るす主要な役割を持っていましたが、装飾的な「エプロン」(垂れ下がった革帯)が付いていることも多かったです。

2. 帝政中期~後期(紀元3世紀以降)

 

  • 特徴:

    • 徐々に幅が広くなり始めます。

    • 剣の携帯方法が、腰ベルトから**肩掛け帯(バンドリア baldric)**に変わることが増えていきます。これは、長剣である「スパタ (Spatha)」の採用に伴い、腰ベルトでは長すぎて使いにくくなったためです。

    • その結果、腰ベルト自体は実用的な役割よりも装飾的な役割へと変化し、垂れ下がっていたエプロンも徐々に消えていきました。

3. 帝政後期(紀元4世紀~5世紀)

 

  • 特徴: 非常に幅の広いベルトが主流となります。

    • 検索結果にもあるように、一部のベルトは100mm(10cm)以上の幅に成長した例も見られます。

    • プロペラ型などの特徴的な金属製の補強具(マウント)が取り付けられ、非常に硬く、幅広に作られました。

  • 機能: 装飾と階級を示す象徴としての意味合いが強くなりました。


 

 

古代ローマの軍人が着用するベルトは、帝政後期にかけて装飾性を高め、幅が広くなる傾向がありました。

これは、剣を吊るすという主要な役割が肩掛け帯に移ったことで、ベルト自体が階級や威厳を示すためのファッションアイテムへと変貌していったためです。

2) 「暗殺を防ぐためにベルトを締めるようになった」説 — サクス(小物入れ)の話

NHKの解説をまとめた番組記事では、古代ローマ期に「ポケット(やそれに似た収納)」が暗殺リスクを高めるとして制限があり、その代替として腰に袋(サクス)をぶら下げ、これを支えるために頑丈な帯(=ベルト)が広まった、という話が紹介されています。

 

古代ローマで使われていた、ベルトに吊るすタイプの袋やポーチは、ラテン語で一般的に「サックルス (sacculus)」や「サックス (saccus)」と呼ばれていました。

サクスだとナイフの名前でややこしいですね(無関係)

 

 

番組では服飾史研究家の解説を引用してこの“暗殺防止説”が語られています。

興味深い話ですが、これが唯一の正しい説明というよりは「ベルトが生まれる理由の一つの物語」として受け取るのが無難です。

ポイント:面白いエピソードだが、ベルトの誕生は軍事的・実用品的要因や服飾文化の変化が複合的に関与しているため、単一要因だけで説明するのはやや単純化しすぎ。

 

古代ローマで暗殺事件が増えた結果、ポケットが規制された。

ここでいうポケットというのは服の中に物を隠せるもの全般という意味でしょう。

トーガやチェニックの折りたたみ部分など布のたるみに武器や毒物を隠せたから

現代のポケットではない。

 

暗殺に対する法律を調べると武器を隠し持つ事が禁止されていました。

暗殺に使われるような武器の携帯や隠匿に対して、古代ローマでは包括的な法律で対処していました。

特に、武器を隠し持って殺人を犯す行為は、非常に重い罪として禁じられていました。


暗殺者・毒殺者を罰する法律

 

「シヌス(服のひだ)」に武器を隠し持つ行為そのものを直接的に罰する法律があったわけではありませんが、その行為の目的である「暗殺」を対象とした明確な法律が存在しました。

コルネリウス法(Lex Cornelia de sicariis et veneficiis)

 

  • 制定: 紀元前81年にルキウス・コルネリウス・スッラによって制定された法です。

  • 対象: 法の名称にある通り、暗殺者(sicarii毒殺者(veneficii)の犯罪を特に規定し、厳しく罰することを目的としていました。

    • 暗殺者(Sicarii)という言葉は、「シカ (sica)」という小型の短剣を持つ者、という意味に由来しており、この種の隠し持てる武器を使った殺人を指していました。

  • 刑罰: この法律が適用されると、通常は死刑(追放刑や財産没収を含む)という最も重い刑罰が科されました。

この法律は、衣服に隠した武器を使って無防備な相手を襲うという、計画的かつ卑劣な殺人の形態(暗殺)を撲滅しようとするローマの姿勢を示しています。


️ 武器携帯に関する広範な規則

 

暗殺事件が増加するずっと前の共和政初期の成文法である「十二表法(Lex Duodecim Tabularum)」においても、武器の不当な使用や窃盗犯の武器携帯について規定がありました。

  • 例えば、夜間の窃盗は犯人を殺害しても合法でしたが、日中の窃盗犯については、「犯人が武器を持っていなければ殺害することは禁止される」といった規定があり、市民の武装状況や武器の不携帯が法的な判断基準の一つになっていました。

これらの法律は、古代ローマが、武器を携帯すること自体よりも、その武器で他人を害すること、特に隠匿した武器による卑劣な暗殺を最も重く見ていたことを示しています。

 

武器を携帯するのは平気だったけど隠すのはダメだった

その結果、ウエストポーチみたいな袋を腰に吊り下げるため、短剣などを吊るすためにベルトは太くなった。

 

今のような革のベルト、その原型が作られたのがこの時代と言われています。

 

ちなみにポケットが生まれたのは16世紀

 

 


3) 軍用ベルト=ギャリソンベルトの存在感(無骨で渋い)

軍装はベルト史の大きな柱です。中でもギャリソンベルトは、駐屯地や礼装向けの厚手革ベルトで、真鍮バックル・幅広めのどっしりした見た目が特徴。

第一次世界大戦〜第二次世界大戦期に軍で使われ、民間ファッションにも“ヘリテージ”として受け継がれました。

無骨なディテールは“男らしさ”を演出するには最適で、現代のカジュアルに一点投入すると雰囲気が一気に上がります。

 

軍用ベルトには拳銃や弾丸を収納するための役割があり普及しました。

 

 

 


4) ファッションとして定着した過程 — 種類とトレンド

20世紀以降、ベルトはただの実用品から“見せる”アイテムに変わりました。

 

幅やバックルの形、素材(本革、キャンバス、メッシュ、チェーンなど)で役割が変わり、

プレーンなドレスベルトからリングベルト、ガチャベルト、サッシュベルトまでバリエーション豊富になっています。

 

 

デザイナーやトレンド(例:Diorのニュー・ルックでウエスト強調、Twiggyの時代の腰高スタイル、近年のY2Kリバイバルなど)と連動して、

ベルトの存在感は強まったり弱まったりします。

 

 


5) 男性向け:今のベルトの選び方(実用+ちょい遊び)

実際に買う・使うときのチェックリストを短く。

  • 用途を決める:ビジネス(スーツ)→幅25〜35mm、細めで控えめなバックル。本革。
    カジュアル→幅は自由、キャンバスや編み込み、本革の太めもアリ。ギャリソン風の厚革で無骨に振るのも◎。
  • 幅とバックル:スーツは細め&シンプル。デニムやチノには39mm前後のやや太めが合いやすい(ギャリソンの例)。
  • 素材:長く使うならフルグレインレザー。本革は経年変化が楽しめる。安く一時的に楽しむならキャンバスや合成でも問題なし。
  • 手入れ:革は乾燥しないようにクリームで保湿。バックルの金属は時々磨く。
  • 遊びポイント:1本はプレーン、もう1本は存在感あるギャリソン風やチェーン/リング系を持っておくとコーデの幅が広がる。

6) コーデ例(すぐ使える)

  • 休日カジュアル:白T + デニム + 厚革ギャリソンベルト → シンプルだけど締まりのある男らしさ。
  • きれいめカジュアル:シャツ + チノ + 細めのレザーベルト → フォーマル感を残しつつ、腰回りが整う。
  • トレンドで遊ぶ:ハイウエストパンツにサッシュ風や幅広ベルトでウエストを強調 → モードな印象に。

7) まとめ — ベルトは「歴史とスタイルが詰まった小物」

  • 元々、ベルトは腰に袋をぶら下げるための道具だった
  • 青銅器時代からベルトの原型は存在していた。
  • 古代ローマや古代ギリシャでは剣を吊るすために使われた
  • 古代ローマではベルトにサクス(袋)や短剣を吊るす事になった。

 

 

また、ベルトに剣を吊るすために太くなり権威の象徴としても使われた。

ポケットが登場する事でベルトの物を吊るすという機能は廃れていった。

 

もちろん現代でもベルトにつけるポーチなどはある。

けど主流ではない感じ。

 

ではでは(^ω^)ノシ

 

この記事もおすすめ

ポケットの歴史とは?いつ頃から使われてる?

 

スカートはどうして女性の服に?その歴史と背景を紐解く

 

チノパンのチノってどんな意味?

 

 

 

管理人の著書

ブログ検索

-道具の雑学