なぜ関東の料理は関西より味が濃いのか──その疑問には、単純な好み以上の「歴史」と「流通」が絡んでいます。
関東の料理 味が濃いという印象は、江戸時代の都市構造や物流、出汁の素材選びが長い時間をかけて形づくったものだと考えられています。
江戸 が巨大消費地になった影響
江戸は短期間で人口が急増した大都市でした。
城下の整備や都市建設のために多くの労働者が集まり、食事は「大量に食べられて保存が利くこと」が求められました。
玄米中心の食生活に合わせて、少ない手間でご飯が進む濃い味のおかずが好まれたのです。
塩辛い佃煮やしっかりした醤油味の煮物は、保存性と満足感の両方を満たしました。
こうした需要が家庭料理や外食の味付けに波及していったとされています。
江戸の近くで採れた大根を塩漬けしたりエビや小魚で作った佃煮などを食べていました。
江戸時代初期、江戸は湿地帯で開拓しないといけない、そこで大量の人が働いていた。
力仕事が中心だったから当然、汗で失った塩分がとれる塩辛い濃いめの味付けが好まれた
また大阪から保存が効くように加工された食品が大量に運ばれたのも原因の一つ
更に栄養満点の水が東京湾に流れ込み豊富な魚介類が楽しめた
そこでお刺身を美味しく食べるために濃口醤油が開発された。
そんなわけで関東では味の濃い料理が流行るようになったというわけ
大阪 は集散地としての役割を担った
一方で、大阪は「天下の台所」と呼ばれ、全国の年貢米や特産品が集まる卸売の中心地でした。
多様な食材が集まる市場があることは、素材の鮮度や種類を生かす料理文化を育てます。
結果として、昆布を中心とするだしや薄口醤油といった、素材の旨味を引き出す上品な味付けが上方(関西)で好まれる基盤になりました。
天下の台所はダテじゃなくて日本中の品物が大阪に集まりそこから江戸や他の地方に運ばれていった
関西はとにかく食料が豊富にあったし日持ちするように塩漬けとか干物にする必要がなかった
蔵屋敷や堂島の米市場が果たした役割
多くの大名が大阪に蔵屋敷を置き、年貢米を売買したことが市場の規模を押し上げました。
市場で価格が決まり、それが流通の中心を成すことで、物資の集約と分配が効率化されたのです。
こうした経済構造が「大阪を経由して多様な食材が手に入る」状況を作り、地域ごとの味の差に影響を与えたと考えられています。
出汁と水質、醤油の違いが味の印象を左右する
味の「濃さ」を生む主な要素の一つが出汁です。
関東では鰹節を主体にしただしと濃口醤油の組み合わせが多く、香りと色、塩味がはっきりします。
対して関西は昆布だしを重視し、薄口醤油で色を抑えつつ旨味を引き立てる調理が主流でした。
さらに地域の水質も影響します。軟水は昆布の旨味が出やすいと言われ、関西のだし文化と相性が良かったとされています。
意外な誤解:色と塩分は必ずしも一致しない
「色が濃い=塩分が多い」と思われがちですが、薄口醤油の方が塩分が高い場合もあります。
見た目の色と塩味の強さは別の要素で決まるため、色の違いが「濃い・薄い」の印象を生みやすい点には注意が必要です。
外見の違いが味覚の先入観を作り、それが地域間の評価差に繋がっていることが少なくありません。
江戸時代の物流が味の「方向性」を決めた
物流の視点から見ると、江戸は大量消費を前提とした都市、上方は供給と流通のハブという二極構造がありました。
船を使った海運と五街道を使った陸運が連携して物資が移動し、特に米や日用品の流れは大阪を経由することが多かった。
その結果、「保存と満腹感を優先する味付け」と「素材の持ち味を生かす味付け」という二つの文化がそれぞれの地域で根付いたと考えられています。
🍜 1. だし(出汁)と調味料の違い
関東:鰹節+濃口醤油の文化
関東では主に 鰹節ベースのだし(かつお出汁) と 濃口醤油(こいくち醤油) を使うスタイルが伝統的で、味がはっきり濃く感じられます。
鰹節の旨味と濃口醤油のコクが主役になる料理が多い。
すすり心地の濃い色としっかりした塩味が特徴。
この味付けは、江戸(現在の東京)を中心とした武家社会や庶民文化の味覚に合わせて発展しました。
関西:昆布だし+薄口醤油の文化
一方、関西では 昆布だし(こんぶ出汁) と 薄口醤油(うすくち醤油) が中心で、だしそのものの香りや素材の味を引き立てるのが重視されてきました。
薄口醤油は色は淡いですが、素材の旨味を活かすための味付けとして発達。
出汁の香りや食材の色合いが大切にされる料理文化です。
結果として卵焼きの味付けからうどんの汁まで味付けに大きな違いが生まれました。
関西地方から関東地方の間にある東海地方はグラデーション
本州中央部の太平洋側に位置し、愛知、岐阜、三重、静岡の4県で構成される地域です
だから味付けも特殊で関東地方の特徴もありつつ関西地方の味付けもあるみたいな感じ
名古屋の味噌カツとか静岡の黒おでんなど味付けは関東と関西両方の影響を受けているというのが面白いところ
愛知:味の正体は「八丁味噌」という別物に近い味噌
愛知、とくに名古屋周辺の料理の土台になっているのが、八丁味噌(豆味噌)です。
これが他の地域の味噌とかなり違う。
大豆と塩だけで作る
1年以上じっくり熟成
色が濃く、酸味・苦味・渋み・うま味が強い
一般的な米味噌や麦味噌は、米や麦の甘みが入るため、柔らかい味になります。
一方、豆味噌はコクが非常に強く、色も黒に近い深い赤色になります。
そのため、味噌カツ・味噌煮込み・味噌おでんなど、料理全体が「重くて濃い」印象になるわけです。
関東・関西ともちょっと違う立ち位置
整理するとこんな感じになります。
関東:醤油文化 → 塩気が強い
関西:だし文化 → うま味重視
愛知:豆味噌文化 → コクと重厚感
愛知は地理的にも東西の中間にありますが、
味はむしろ「第三勢力」に近い立ち位置です。
濃い味というより「重い味」
誤解されがちですが、
愛知の料理は単に塩辛いわけではありません。
甘み
うま味
苦味
渋み
が混ざり合った「深い味」です。
だから一口目のインパクトが強い。
味噌カツや味噌煮込みうどんを食べると、
関東・関西の人が「特殊」と感じるのは、この層の厚さのせいです。
静岡は東西の食文化がぶつかる場所
静岡は昔から東海道の中間地点でした。
江戸と京都・大阪を行き来する人や物が必ず通るルートです。
そのため、
関東の濃口しょうゆ文化
関西のだし重視の文化
この両方が入り込み、混ざっていったとされています。
つまり、
「どちらの味でもない」ではなく
「どちらの要素もある」が正解に近いです。
料理を見ると“混ざっている”のが分かる
代表的な郷土料理を見ると、地域の性格がよく出ています。
静岡おでんは関東寄りに見える
静岡おでんは、色がかなり黒いことで有名です。
牛すじや濃いしょうゆを使っただしで煮込むため、見た目も味も濃くなります。
これは、どちらかといえば関東の「濃口文化」に近い特徴です。
ただし、食べるときに魚の粉や青のりをかけるなど、だしのうま味を足す食べ方もあり、関西的な発想も混ざっています。
西側は関西寄り、東側は関東寄り
静岡県は横に長いので、地域差もかなりあります。
東部(伊豆・沼津など)
→ 東京との結びつきが強く、関東寄りの味付け西部(浜松など)
→ 名古屋・関西との交流が多く、甘めやだし文化が入りやすい
そのため、同じ県でも味の傾向が少しずつ違います。
まとめ:日常で確かめられる具体例
うどんのつゆ一つとっても分かりやすい差があります。関東のつゆは濃口醤油とかつおだしで黒みと力強さが出ます。
関西のつゆは昆布だしを軸にして色を抑え、だしの香りで満足感を出す調整がなされています。
すき焼きや卵焼き、味噌の種類などにも同じ傾向が見られます。
結局、関東の味が「濃い」と感じられるのは、江戸時代から続く都市需要、物流の仕組み、だしや醤油の選択といった複数の歴史的要因が複合した結果だと言えます。
最後に、この話を覚えておくと、次に東西で食べ比べする時にちょっと深い話題を振れるはずです。
関東は江戸の街を作るために濃いめの味付けが好まれ、関西は食料が豊富にあったから素材を活かす味付けが好まれた
地域性というか歴史を感じて良いですね
ではでは(^ω^)ノシ
この記事もおすすめ
関西で「右に立つ」理由まとめ — エスカレーター立ち位置の謎を解く

