道具の雑学

漫画雑誌がカラフルな理由――紙と編集の“合理性”と工夫


漫画雑誌をめくると、モノクロのページの合間に淡いピンクや黄緑の紙が混ざっている──あれ、なぜ白くないんだろう?

実はあの色には「コスト」「紙の性質」「編集上の工夫」がぎゅっと詰まっている。

この記事では、印刷・製紙の事情から編集的な理由、そしてWebの編集に活かせるヒントまで、かみ砕いて解説します。


1. 結論(まずは短く)

漫画雑誌がカラフルなのは、安い再生紙(更紙)の性質をカバーしつつ、読者の視覚体験を高めるための合理的な工夫です。

主なポイントは3つ。

  • 再生紙(古紙由来)は完全に白くならず“黒ずみ”が出やすい → 色をつけて目立たなくする。
  • 流通・大量印刷のコストを抑える必要がある → 漂白や高品質紙は高コスト。
  • 色でセクションを分ける編集上の工夫 → 読みやすさ・楽しさの演出。

 

 


2. 用紙の事情:『更紙(ざらがみ)』って何?

漫画雑誌の本文によく使われるのは「再生紙」をベースにした低コストの用紙(業界では更紙や印刷せんか紙と呼ばれることが多い)。

これは新聞や古紙を原料にしているため、完全に脱墨(インクを落とす処理)しても微量のインク残りが出る。

 

 

白に近い紙にすると漂白や脱墨工程が増え、製造コストが上がる。

そのため、あえて淡い色を付けた再生紙を用いるのが合理的。色がついていれば、紙表面に残る黒ずみやムラが目立ちにくくなります。

 

つまり漫画雑誌に使われるのは基本的に再生紙、真っ白にはならないから淡い色をつけて黒ずみなどが目立たないようにしている。

コミックスなどは再生紙を使っていないから白い紙を使っているというわけです。

 

更紙ができるまでの工程

古紙の回収・選別

更紙は 古紙(新聞・雑誌・コピー用紙など)を原料にする再生紙 です。
製紙工場に集められた古紙は、まず 紙の種類・汚れ具合・混入物 で分類されます。

  • 新聞古紙

  • 雑誌古紙

  • オフィス古紙

  • ダンボール(これは更紙にはあまり使われない)

選別が甘いと、印刷時にトラブルや黒ずみが増えるため、意外とこの工程が重要。


パルパー(巨大ミキサー)で紙をドロドロにする

古紙は水と一緒に パルパーという巨大な撹拌機 に投入され、
紙繊維をほぐしてスープ状の「パルプ」 にします。

この段階ではまだ紙に付いていた

  • インク

  • ホチキス針

  • セロテープ、糊

  • プラスチック片

などがそのまま混ざっています。


インクやゴミを取り除く(脱墨工程)

更紙は白さをあまり求めないとはいえ、ある程度のインク除去は必要です。

使われる工程は以下のようなもの:

● スクリーン(網)

大きいゴミ(テープ、ホチキス針)を除去。

● クリーナー(遠心分離)

重い異物(砂、金属など)を取り除く。

● フローテーション(気泡浮選)

・パルプに薬品を加え
・微細な泡を吹き込み
・インクを泡にくっつけて浮かせ
・上澄みだけをすくい取る

という インク取り専用の工程
これでも完全に白くはならないため、更紙では 多少残ったインクを許容 します。


 色を付ける(着色工程)※更紙の特徴

更紙が淡いピンク・黄色・緑などをしているのはここが理由。

脱墨で取り切れなかった黒ずみを隠すため、
薄い色(パステルカラー)をパルプに混ぜて調整 します。

  • ピンク → 目立つ黒点をやわらげる

  • 黄やクリーム色 → インク残りが最も目立たない

  • 黄緑・水色 → 雑誌の“区切り”として使う出版社もある

この 着色が“更紙=カラフル”の一番の核心 です。


抄紙機(しょうしき)で紙にする

巨大な抄紙機にパルプを流し、
次の工程で紙の形にしていきます。

● ワイヤーパート

細かい網で水を落とし、紙の原型を作る。

● プレスパート

巨大なローラーで水を搾り取る。

● ドライヤーパート

熱で乾かして紙の強度を作る。


巻き取ってロール紙にする

乾いた紙は大きなロールに巻かれます。
(新聞紙の巨大ロールと同じイメージ)

出版社・印刷所へ運ばれ、漫画雑誌の本文部分として使用されます。


✅ 更紙の特徴まとめ

  • 古紙を原料にする → 安い

  • 脱墨で完全に白くはならない → 黒ずみが残る

  • だから薄い色を付ける → 黒点が目立たない

  • 構造が簡素でパルプ品質も高くない → ザラっとした手触り

  • 大量印刷に向いている → 漫画雑誌に最適


3. コストと大量生産の現場事情

週刊・月刊の漫画雑誌は発行部数が多く、短い周期で大量に刷る必要があるため、用紙コストの最適化は死活問題です。

白い高品質紙を使うと単価が跳ね上がる。そこで「色付き再生紙+編集での見せ方」でコストを抑えつつ読者満足度を保つ、というバランスを取っています。

 

また、製紙の集積地(紙産業が盛んな地域)との連携で大量調達が容易なのも理由の一つです。

安い値段で漫画雑誌が買えるのは再生紙を使ったりという企業努力の結果です。

 

 

 


4. デザイン上の理由:色は“区切り”である

色紙を複数使うことは、単に紙の欠点を隠すためだけではありません。

  • 各作品やコーナーごとに紙色を変えることで、読者が「ここで切り替わった」と直感的に分かる。
  • 長く厚い雑誌を読み進める際の“視覚的なリズム”を作る。飽きにくく、読み進めやすい構成になる。
  • センターカラー(作品の一部をフルカラーで見せる手法)との組み合わせで、より視認性を高める演出が可能。

5. 単行本との違い

単行本(コミックス)は製本コストが許す範囲で白い紙を使い、印刷品質も上げる傾向にあります。

雑誌は「速報性」「低コストで大量供給」が求められるメディア特性上、異なる紙とデザイン戦略を取るわけです。

 

漫画雑誌はとにかく早く大量に供給されなおかつ消耗品として扱われる。

単行本は長期間読み返されるのが前提だから丈夫に作られているというわけです。

 

 


6. よくある疑問Q&A

 

Q. なぜ全部モノクロにしないの?
A. 紙の黒ずみや印刷ムラを隠すためと、読者の読みやすさを高めるためです。

Q. カラーページ(センターカラー)は高い?
A. カラーページはもちろんコスト増ですが、宣伝効果や読者の注目を集めるために戦略的に使われます。


まとめ

漫画雑誌がカラフルなのは、単なる“見た目の遊び”ではなく、再生紙の性質・大量印刷のコスト構造・編集上の工夫が複合的に絡んだ結果です。

紙の色は「欠点をカバーする実利」と「読む楽しさを増やすデザイン」の両面を担っています。

紙の事情を知ると、雑誌をめくるときの見方も少し変わりますよ。もしこの記事が気に入ったら、SNSでシェアしてみてください(下にSNS用リードを用意しました)。

 

 

ではでは(^ω^)ノシ

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