~歴史と実務が生んだ世界のスタンダード、そして現代の色の系譜~
世界の国旗を眺めると、驚くほど多くが「三色旗(トリコロール)」であることに気づきます。
フランス、ロシア、イタリア、ドイツ、オランダ……。なぜ三色旗がここまで広まったのでしょうか。
そこには、歴史的な事件と実務的な理由、そしてデザインの必然が隠れています。さらに20世紀以降は「地域や民族の連帯」を示す色彩が各地で採用され、三色の意味はますます多層化しました。
オランダと三色旗の起源
三色旗のルーツは16世紀末のオランダにあります。
スペイン支配からの独立運動のなかで、従来の王家紋章ではなく市民が掲げる「民衆の旗」としてオレンジ・白・青の三色が用いられました。
やがて海上での退色や視認性の問題からオレンジが赤に替えられ、現在の赤・白・青になった経緯はよく知られています。
こうした「民衆の旗」が他国に波及し、三色という簡潔な形式は革命や独立の象徴になっていきます。
フランス革命と「三色=理想」の記号化
フランス革命が象徴的に示したように、三色は理念を三分割して表すのに都合がよい数でした。
自由、平等、友愛──三つの理念を色に割り振ることで、視覚的に政治的メッセージを伝えやすくなります。
フランスのトリコロールは、以後の国旗デザインに対するモデルケースとなりました。
実務性:誰でも作れる・見分けやすい
三色旗は布を縫い合わせるだけで作れ、特別な刺繍や細工を必要としないため、民衆運動や独立運動で広まりやすかった点が大きいです。
さらに、赤・白・青のようなコントラストの強い色は遠方からも識別しやすく、海上や戦場での視認性という実務的要件にも合致しました。
デザインの原則として「色数は三色以内に抑える」とされることも多く、視覚的なシンプルさも普及に寄与しました。
現代の色の系譜 — 地域的連帯と政治的意味
20世紀の脱植民地化・民族運動の波に乗って、新たな「色の系譜」が各地域で形成されました。
これらは単に見た目の好みではなく、地域共同体や歴史的連帯、反植民地主義や民族自決の意志を示す記号となりました。
汎アフリカ色(赤・黄(金)・緑)
多くのアフリカ諸国で見られる赤・金(黄)・緑の組み合わせは、アフリカの独立運動・民族的連帯の象徴です。
これらの色はエチオピアの伝統的な配色の影響や、独立を主導した政治思想家・運動(パナフリカニズム)によって広まりました。
ガーナやギニア、マリなど初期独立国が用いたことが、周辺国への波及を生み、結果として大陸全体で一種の「共通語」として機能しています。
汎アラブ色(黒・白・緑・赤)
中東では黒・白・緑・赤の組み合わせが多くの国旗に見られます。
これらの色は、歴史的な王朝や反乱、そして20世紀初頭のアラブ民族主義の象徴として位置づけられ、多くのアラブ諸国の国旗に採用されています。
地域的なアイデンティティを示すため、同じ色群を用いながら配置や図案で国別の差異を出すという設計が目立ちます。
汎スラブ色(赤・白・青)
ロシアの影響を受けた赤・白・青もまた、スラブ系国家で広く使われています。
19世紀以降の民族運動や国民意識の高まりとともに採用が進み、それぞれの国で色の配置や比率、加える紋章によって固有性を表しています。
脱植民地化以降のデザイン傾向
独立直後の国旗には、しばしば「地域連帯の色」や「解放の象徴」が取り込まれましたが、次のような傾向も見られます。
- 単純な三色 + 象徴(星・三日月・紋章):三色の基本形に、民族や政体を示す図像を付加して差別化。例:多くのアフリカ諸国や中南米の旗。
- 伝統文化や自然を前面に出す傾向:特定の植物、太陽、武器など土着のシンボルが加えられる例が増えた。これは「外来の紋章」に替わる自前の象徴を求めた結果です。
- 識別性への配慮:航空・海上での識別や国際行事での視認性を考え、シンプルでコントラストの高い配色が好まれる傾向は今も変わりません。
三色以外の選択肢と例外
もちろん三色に頼らない旗も数多く存在します。単色に大きなシンボルを置いたデザイン(日本の白地に赤い円など)、複雑な紋章を中心に据えたデザイン、あるいは多数の色を用いて地域性を強調するデザインもそれぞれの文脈で有効です。しかし概して言えば、「作りやすさ」「視認性」「象徴性」のバランスが三色で取れるため、トリコロールが広く採用され続けているのです。
三色国旗の国家・地域一覧(地域別・代表的な現代国家/地域)
国連加盟国+オブザーバー+部分承認国/事実上の独立地域を含む」を対象に、現代で「三色(tricolour)を主たる構成色とする国旗」を地域別にできるだけ網羅してリスト化しました。
(注)国旗の「三色」判定は 旗に使われる色の総数が3色である、あるいは 三色を基調とするトリバンド(縦・横・斜めの三帯)で、補助的な細線や紋章の色を含めても主たる配色が3色と判断できる場合 を含めています。判定基準や出典によって差異が出るため、最終的な“正確な件数”は資料により変わります —
各項目は「国名(省略形) — 主な配色(順序/向き)」の形式です。部分承認国・事実上の独立地域も含みます。
※多色(4色以上)や、2色がベースで紋章に別色があるケースは除外したり、判断が分かれる場合は括弧で注記しています。
ヨーロッパ
- フランス — 青・白・赤(縦)
- イタリア — 緑・白・赤(縦)
- ルーマニア — 青・黄・赤(縦)
- ベルギー — 黒・黄・赤(縦)
- オランダ — 赤・白・青(横)
- ロシア — 白・青・赤(横)
- エストニア — 青・黒・白(横)
- リトアニア — 黄・緑・赤(横)
- ハンガリー — 赤・白・緑(横)
- クロアチア — 赤・白・青(横、中央に紋章)
- セルビア — 赤・青・白(横、紋章)
- スロバキア — 白・青・赤(縦帯ではないが三色)
- スロベニア — 白・青・赤(紋章付き)
- ブルガリア — 白・緑・赤(横)
- モルドバ — 青・黄・赤(中央に紋章)
- アルメニア — 赤・青・橙(横)
- アゼルバイジャン — 青・赤・緑(横・三日月+星)
- ルクセンブルク — 赤・白・青(横、薄めの青)
- アンドラ — 青・黄・赤(縦、紋章)
北欧・英領周辺(該当少)
- (注:北欧の十字旗は色数が2〜3色だが十字型で三色扱いされる例は限定的。代表は少数)
アジア
- イラン — 緑・白・赤(横、中央に紋章:三色を基調)
- タジキスタン — 赤・白・緑(横、王冠+星)
- タジキスタン等中央アジアの一部国に三色採用例あり
- アルメニア / アゼルバイジャン(上記ヨーロッパにも含む)
- インド(横三色だが紋章の色を含めると4色との見方あり。トリコロールとして歴史的に参照される)。
中東(アジア/アフリカ横断)
- イラク・シリア等は4色以上を含む変遷があるため除外/注記
アフリカ
(汎アフリカ色やその派生が多い)
- セネガル — 緑・黄・赤(縦、星)
- マリ — 緑・黄・赤(縦)
- ギニア — 赤・黄・緑(縦)
- コートジボワール — 橙・白・緑(縦)
- ガーナ — 赤・黄・緑(横、黒星)
- カメルーン — 緑・赤・黄(縦に近い)
- コンゴ共和国(Brazzaville) — 緑・黄・赤(対角)
- ボツワナは多色で除外、他にもケニアやエチオピア等は三色を基調(ケニアは黒・赤・緑+白の細線=三色基調)(ウィキペディア)
北米・中南米(北米含む「アメリカ大陸」)
- コロンビア — 黄・青・赤(横、黄が幅広)
- エクアドル — 黄・青・赤(横、紋章あり)
- ベネズエラ — 黄・青・赤(横、星)
- ペルーは赤・白(2色)→除外
- メキシコ — 緑・白・赤(縦、紋章:三色基調)
- チリ — 赤・白・青(縦横組合せながら三色)
- パラグアイ — 赤・白・青(横、両面で紋章異なる)
- ボリビア — 赤・黄・緑(横)
- コスタリカ/ニカラグアなどは多色・紋章での扱い注意(判断分かれる)(ウィキペディア)
カリブ・北米(部分的)
- アメリカ合衆国 — 赤・白・青(星条旗:三色)
- カナダは赤・白(2色)→除外
オセアニア
- パプアニューギニア等は多色・図柄が主体 → 三色基調の国は限定的
部分承認・事実上独立地域(例)
- アブハジア — 緑・白・赤(横に白のストライプと星) → 三色系。
- 南オセチア — 白・赤・黄(横三色)
- サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ) — 黒・白・green・red(4色)→除外
集計(概数)
参照した主要ソース(Wikipedia「List of flags by number of colours」)を基に、
国連加盟国+オブザーバー+主な部分承認国を含めて集計した場合、三色(tricolour)と判定できる国家・地域は概ね「約70〜90件」の範囲になります。
これは判定基準(紋章の色を含めるか/除くか)によって増減します。
出典・根拠
- Wikipedia — List of flags by number of colours(三色に分類されている国・地域の一覧を参照して集計・地域分けを行いました)。(ウィキペディア)
- Wikipedia — Triband (flag)(トリバンド/トリコロールの定義と分類の補助)。(ウィキペディア)
- Wikimedia Commons — Gallery of triband flags(視覚的確認用)。(ウィキメディア・コモンズ)
おわりに — 色を見ると、時代が見える
三色旗が世界のスタンダードになったのは、偶然ではなく歴史と実務の積み重ねによるものです。
オランダやフランスに始まる近代の政治史、脱植民地化以降に生まれた地域連帯の色彩、そして日常的な「作りやすさ」と「見えやすさ」。
国旗を一枚見るだけで、その国がどの時代の何を重視してきたか、ある程度推し量ることができます。
次に外国の旗を目にしたときは、単なる色の組合せとしてではなく、そこに込められた歴史や連帯の物語を思い浮かべてみてください。
ではでは(^ω^)ノシ
この記事もおすすめ
インドネシアとモナコ、国旗の見分け方とは?デザインが一緒すぎる
ピザとピッツァの違いって?艦これで説明!格好つけているわけじゃなかったんだwww

